2016年3月12日土曜日

「アメリカ住宅事情」


「アメリカ住宅事情」 

住宅購入 日本とアメリカの違い

■住宅の購入は有利な資産運用として

 平均的なアメリカ人は、大学を卒業して仕事について、安定した収入を得るようになり数年経つと、家の購入を考え始めます。ほとんどの人は、もちろん銀行から住宅ローンでお金を借りて購入するわけですが、日本と次のような点で決定的に違うようです。

1.買う対象となる家はたいてい中古住宅です。

2.一生その家で暮らそうという人はほとんどいません。

3.買う時の判断基準となるのは、その家が売る時に高く売れるかどうかという事です。

4.土地は建物と一体的に評価取引され、使われていない土地の評価は高くありません。

 銀行から借金をしてまで住宅を購入するのは、その方がずっと節税になるという事と、優良な不動産(土地と建物)は将来必ず値上がりして、銀行にお金を預けておくよりも有利な資産となるからです。日本では、土地はともかく借金をして購入した建物は、消費財として評価され、毎年減価償却されて20年も経つと資産価値はまったく無くなってしまいます。アメリカでは、住宅の購入は一種の投資(有利な資産運用)と考えられているのに対して、日本では逆にきわめて大きな負債を抱え込むことになってしまっています。

■家の履歴書
 しっかり建てられた住宅は、木造であっても100年以上の耐久性を確保することは難しいことではありません。アメリカの平均的な都市部の住宅地は、100年から100年近く使われ続けている木造住宅で占められています。居住者はどんどん移り変わっても、中古市場が発展していて、その時にその家に住むことが必要な新しい居住者に転売されていきます。

 カリフォルニアなどでは、購入しようとする家が今までどのように手入れされてきたかが詳しく具体的に記録され、その情報が購入者に開示されていて不動産の評価価格にも反映されています。購入した人も、将来その家をより高く売ることを考えて、家の履歴書(カルテ)をしっかり作り、第三者機関としての役所に届け出ています。

■不動産評価の悪循環

 日本では、湿潤な気候風土のせいで木造の住宅の耐久性が短いなどと言う人がいますが、正当な主張ではありません。日本は古来から世界で最も優れた木造建築の歴史があり、世代を超えて使われ続けた住宅の例はまだ全国に多数あります。そのような例が消えていくのは耐久性が原因ではなく、人々の価値観や生活様式の変化、そしてそのような建築が存続することを許容しない様々な基準や法律などの社会的制度ができたためでもあります。

 さらに、戦後建てられた住宅は、質より量を重視したため、大きさや構造、仕様が貧弱で、とても不動産としての評価に耐えられなかったものが多かったため、必ず値上がりする土地に比べて担保価値は低く見られてしまったのでしょう。建物に担保価値が認められないとどうなるか。建物は消費財と同様に評価され、家を建てるにしてもいかに安く作るかが主要な目的になってしまうわけです。そうすれば当然、耐久性の高い世代を超えて使われていくような良質な住宅は建てられなくなってしまう事になります。

■アメリカにおける住宅ローンの日本との違い

 アメリカで一般的な住宅取得者が組む住宅ローンは、日本の住宅ローンとはまったく違ったノンリコースローンです。これは非遡及型ローンとも呼ばれ、担保にした不動産以外に債務が及ばない融資のことで、「人」(会社)の信用を担保にする日本の通常の融資とは異なり、不動産そのものの収益力を担保にした住宅ローンです。自分が住む住宅の場合の収益力とは何か。それはすなわち、家賃を自分に支払い住宅ローンの返済に充てるということで、住宅ローンが完済するまでは銀行などの金融機関と住宅の居住者が、その住宅の共同所有者として、また共同管理者として運営していくことになります。途中で居住者が家賃を支払わなくなったり転居した場合は、建物の所有権は銀行に移り、居住者は居住していた間だけの家賃を支払っただけで、その後銀行に対してローンの残金が残るなどの負債が発生することはありません。優良な物件で、居住している間に市場評価価格が上がれば、銀行にローンの残金を返済してから家を売り払って、利益を得て転居することも可能です。家を購入して所有するといっても限りなく賃貸に近い感覚で、住宅は社会的資産として、中古市場を通して継続して使われ続けることが出来るわけです。
(米澤正己氏より)
 

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